信託はどのように行われる?手続きの流れや費用を司法書士が分かりやすく解説!
皆様、こんにちは。司法書士の竹本海雅(たけもとかいま)です。
ここまで認知症対策として民事信託(家族信託)という制度の概要やメリット・デメリットなどについてお話してきました。
簡単に言いますと、民事信託とは、委託者が特定財産の管理・運用を受託者に任せて、管理・運用によって得た利益を受益者がもらっていくという制度です。
そして、家族信託とは、委託者・受託者・受益者の3者を家族の誰かがなり、家族が特定の財産の管理・運用していくことにより家族で完結していくために民事信託を利用していくということです。つまり、根本は民事信託であるということです。
詳しくは下記の記事に書かれております。
今回はこの家族信託をどのような流れで手続きを進めていくのかについてお話してみます。
家族信託の手続きの流れ
家族信託の手続きは下記のように進んでいきます
①家族信託の目的や信託の対象とする財産を決める
②信託契約を締結する
③財産の名義を受託者に移転する
以下詳細にお話ししてみます。
家族信託の目的や信託の対象とする財産を決める
先のブログでも述べたように家族信託はただ信託手続きをしただけではまったく効果がありません。管理、運用していかないといけません。そして、具体的にどのように管理しえ行くのかについての指針を決めていくためにも、家族信託の目的とその達成のためにどの財産を管理、運用していくのかについて決めましょう。更にどのように管理するのか、受益者はだれにするか、次世代の人に対してはどうするのかといった信託契約の内容をきちんと固めていきましょう。
信託契約を締結する
具体的な信託契約の内容を固めたら、いよいよ契約です。この契約は委託者と受託者の間で締結されます。
なお、この契約締結は公正証書で作成されることを推奨します。
これは、信託がその性質上中長期的に管理、運用をしていかないといけないので後で嫌になった受託者が、この契約は無効だったとか判断能力はすでになかったとか言って信託契約の有効性について争われたりするケースがあります。さらに信託契約書を無くしてしまったりするリスクもあります。
公正証書で作成すると原本は公証役場で保管されるので紛失のリスクは限りなくゼロになりますし、契約締結の際に公証人が委託者や受託者の判断能力をチェックしますので安心材料になります。
また、信託手続きを行う場合に金融機関によっては公正証書で契約書を作成することを求められますので、そういった理由でも公正証書で作成することが推奨されています。
信託手続きを行う
信託契約を締結したらいよいよ本格的な手続きに入ります。
例えば、不動産を信託する場合は委託者から受託者に対して信託を原因とする所有権移転登記を申請します。
又、預貯金にある金銭を信託したい場合は、一回全額引き出して新たに信託口座を開設します。そして信託口座に現金を預け入れをすることにより、受託者が現金を管理・運用することが出来ます。
様々な財産に対応した信託手続きを行うことにより初めて、受託者は財産を管理・運用することが出来るのです。
信託手続きにはいくらかかるの?
では、信託手続きを行うのに実際にいくらかかるのか。ここには大きく分けて①実費②信託報酬の2つがございます。
実費としてかかる代表例は信託契約書を公正証書で作成する場合にかかる証書作成費用です。これは、公証人手数料令第9条別表にて定めれております。
目的の価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
詳しくは下記のリンクをご覧ください
そして、弁護士や司法書士などの専門職が信託手続きを行う場合、地域や難易度によっては異なりますが報酬としておおよそ30万円から100万円ほどかかります。
最後に
いかがでしたでしょうか。ここまで3回に続いて家族信託についてお話しさせていただきました。
家族信託は、比較的最近登場した認知症対策の一つですが、必ずしもすべての方にとって最適な方法であるとは限りません。家族信託のメリットだけでなく、デメリット(リスク)についてもしっかりと理解したうえで、「どのような対策を取りたいのか」「その目的は何か」、そして「家族信託がその目的に本当に適しているのか」といった点について、専門家と十分に話し合い、ご納得の上でご判断いただくことが大切です。
最後まで家族信託シリーズを読んでいただきありがとうございました。
家族信託シリーズの1つ目と2つ目のブログのリンクを貼っておきますのでまだご覧になっていない方は是非ご覧くださいませ。
家族信託シリーズ第一回
家族信託シリーズ第二回