家族信託と成年後見人制度の違いについて司法書士が解説!
皆さま、こんにちは。司法書士の竹本海雅(たけもとかいま)です
今回は、最近よくご相談いただく「成年後見制度」と「家族信託」について、それぞれの特徴と違いをご紹介したいと思います。
どちらも相続や将来の財産管理の対策として注目されている制度ですが、その仕組みや目的には明確な違いがあります。ご自身やご家族にとってどちらの制度が適しているのか、判断の参考になれば幸いです。
家族信託と成年後見制度の基本的な違いとは
家族信託とは?その仕組みと使い方
家族信託は、信託法を根拠とした制度で、本人の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を任せる仕組みです。
登場人物には以下の3者が関わります:
- 委託者:財産を託す人(通常は本人)
- 受託者:その財産を管理・運用する人(主に家族)
- 受益者:財産の管理・運用の利益を受ける人(多くの場合、委託者本人)
契約の内容を柔軟に設計できることが特徴で、財産の運用方法や承継先などを自由に決めることができます。
成年後見制度とは?法定後見と任意後見の違い
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2つがあります。
法定後見制度
ご本人様の判断能力がすでに低下している場合に、家庭裁判所へ申立てを行い、裁判所が後見人を選任します。親族が希望しても、裁判所が適任でないと判断すれば、専門職(司法書士や弁護士など)が選ばれることもあります。
任意後見制度
ご本人様に判断能力があるうちに、将来的に後見人となってほしい相手(受任者)と契約(公正証書)を交わします。実際に判断能力が低下した際には、裁判所に後見監督人の選任申立てを行い後見監督人が選任されたときに、契約が有効となり、その相手が後見人に就任します。
なお、任意後見人には基本的には専門職などの第三者が選任されるケースがほとんどです。
それぞれの制度が向いているケースとは?
成年後見制度が適している方
成年後見制度は財産の管理を行うだけではなく、ご本人様の判断能力がすでに低下している場合や、生活全般の支援が必要な状況に適しています。入院手続きや介護施設への入退所、医療契約など、身の回りの生活に関わる法律行為を代理する身上監護も行うことが出来る制度であるのが特徴の1つです。
具体的にどのようなことをするのかについては下記のブログを参照してください。
また、家族が遠方に住んでいたり、忙しくて日常的な支援が難しい場合なども、専門職の後見人を選任することで安定的なサポートが得られます。そのため、財産管理だけでなく生活面に不安がある場合は、成年後見制度の利用を検討するとよいでしょう。
家族信託が適している方
一方、家族信託はご本人様が元気なうちに契約を交わし、財産の管理や運用を信頼できる家族などに託す制度です。契約内容を自由に設計できるため、たとえば不動産の運用や事業の承継、次世代への資産移転など、より柔軟で戦略的な財産管理を行いたい方に向いています。
裁判所の関与が不要なため、手続きの手間を減らしたい方、費用を抑えたい方にも選ばれています。長期的な視点で財産を守りたい方には、家族信託が適した制度といえるでしょう。
両制度の併用も視野に
たとえば、不動産などの財産は家族信託で管理しつつ、日常の生活支援や身上保護は成年後見制度で対応するなど、目的に応じた併用も可能です。
自分に合った制度が分からない方は、家族信託に詳しい弁護士や司法書士、税理士に相談することをお勧めします。
よくあるご質問
Q. 家族信託と任意後見契約、どちらを優先すべき?
A. 判断能力があるうちに、どちらの制度も準備しておくと安心です。
Q. 家族信託を始めるベストタイミングは?
A. 家族信託とはあくまでも「契約」です。つまりご本人様に意思能力と判断能力が必要となります。なのでご本人様に判断能力がしっかりあるうちに契約を結ぶことが重要です。
Q. 後見人の報酬はどれくらい?
A. 専門職の後見人には、月額2万円~3万円の報酬がかかるケースが一般的です。また後見監督人についても別途報酬が発生します。
まとめ:自分に合った制度選びのために
成年後見制度と家族信託は、どちらも認知症対策や将来の財産管理に有効な制度です。それぞれの特性や目的の違いをしっかり理解したうえで、ご自身の状況に最も適した制度を選びましょう。
迷った場合は、成年後見制度や家族信託に詳しい司法書士・弁護士・税理士など専門家への相談をおすすめします。
おわりに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
将来に備えるためには、元気なうちに準備を始めることが何よりも大切です。「まだ先のこと」と思わず、少しでも不安を感じたら早めに専門家へご相談ください。
この記事が皆様の将来設計の一助となれば幸いです。次回は、家族信託についてより詳しくお話しします。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。