合同会社と株式会社。法人成りするならどっちがいいのか司法書士が解説

皆様、こんにちは。札幌市の司法書士竹本海雅です。
個人事業主から法人化を検討されている方から、「株式会社と合同会社のどっちがいいの?」という質問をよく受けます。

今回は、この両者の違いについてお話してみます。

合同会社に向いている業種ってあるの?

合同会社に向いている事業というのはあります。例えば、次のような業種が向いているとされています。

  • 飲食店、介護事業など会社名が前に出ない事業
  • 相続対策のために資産管理会社を作る時
  • 一般消費者向けの事業全般

このように多額の資金調達を必要とせず、もし多額に資金が必要な場合にサービスやブランドが全面で出てくる飲食事業などの場合は、合同会社が向いていると言えます。

株式会社の特徴について

株式会社の特徴としては次のような点があります。そして、この点が、株式会社の資金調達の容易さを物語っていると言えます。

①株主が有限責任である。
②株式の譲渡が容易
③所有と経営の分離

以下、順番にお話ししてみます。

株主が有限責任である

株主が有限責任であるというのは、「株主は出資した額についてのみ責任を負う」ということです。
例えばあなたがとある会社に100万円を出資して、その会社が事業に失敗して潰してしまった場合、株価は実質ゼロ円となり100万円の損害が発生します。
しかし、株主としての責任はここで終わりです。会社の債権者があなたの自宅に上がり込んで家を差し押さえたり、物を持っていったりしません。
つまり、最悪出資金が返ってこないことだけを想定すれば良いということです。

株式の譲渡が容易

投資家であるあなたが出資をした場合、その出資額に応じて株式会社側は株式を発行します。こうすることで、あなたは株主になれるということです。
そしてあなたが株主をやめたいと思った時に、会社は出資金を返還する義務が生じないわけですから、どうしたらいいのでしょうか。
その際に、ほかの投資家に株式を売ることによって、会社の事業から撤退することが出来ます。そして、出資金を回収することが出来るわけです。

所有と経営の分離

会社は株主の所有物です。そして、この株主が取締役などの会社を実際に経営する人を選ぶことになります。つまり、所有者と実際の経営者が違う人になるということです。
要するに投資後のリターンだけを目的に出資して株主になることが出来るわけです。

株式会社についてのまとめ

このように、とにかく多額の資金調達を行うことができるうえ、金融機関からの融資等を行う上での社会的信用性から株式会社を選ぶことが多いわけです。
しかし、上記で述べた特徴はすべての株式会社に当てはまるわけではありません。上場会社にしか当てはまらない特徴でもあります。
一般的には中小企業が99%占めているわけです。中小企業では、株主=取締役の1人会社が多いわけですし、株式の譲渡も容易ではありません。
では、株式会社と合同会社の違いはどこにあるのでしょうか。

合同会社とは

まず、合同会社に出資する人のことを「社員」と言います。一般的な社員とは言葉の意味合いが違います。
そして、合同会社の社員は有限責任社員であります。そこは株式会社と共通しております。
一方、合同会社の社員は原則として、自分で会社を経営します。つまり、所有と経営の分離がなっておらず、社員=経営者であることが原則です。
さらに合同会社の社員は「持分」という権利を取得します。持分とは、「社員が会社財産に対して持っている権利の割合」のことを言います。
例えば、Aが60万円、Bが40万円で出資して資本金100万円で合同会社を設立し、第一期の売り上げが200万円であった場合、原則損益は各社員の出資額の割合で分配されますので、Aは120万円、Bは80万円の利益を受けるということです。そして、この持分は原則として他の社員全員の同意を得ないと譲渡できません。

株式会社と合同会社の違いとは

会社の意思決定について

まず、会社の意思決定に大きな違いがあります。株式会社は株主の出資額によって変わります。例えば1株1議決権の会社の場合、1株しか持っていなければ1議決権ですが、100株持っていれば100個の議決権を有することになります。つまり、出資した額が多ければ多いほど会社への影響力が強くなるということです。言うならば大株主の意向が反映されやすく、少数株主の意思が反映されづらいということです。逆に言うと様々な経営判断を迅速で行うことが出来るという強みがあります。
一方で、持分会社は1人1議決権が原則です。そこに出資額は関係なく、100万出資していようが1万円しか出資していなくても、1個の議決権を有しているわけです。そして、原則として合同会社は社員全員の同意がないと定款変更などが出来ません。社員がたくさん出てくると、それだけ経営判断が遅くなるということになりますので、出資者を多く募りたいような場合は合同会社は向いていないということになります。

任期について

株式会社では先に述べたように、株主が役員を選び、会社と役員の委任契約によって役員は経営に携わります。つまり、「経営を任せる」という考えがあります。そこで株式会社には「任期」という考えがあります。株主=役員であったとしても同様です。そして、任期が満了したら再任するかどうかを決める必要があります。
一方、合同会社では社員=経営者が原則であります。つまり、「経営を任せる」という考えがありません。よって任期という考えもありません。

最終的にどっちがいいの?

ここまで、株式会社と合同会社の違いについて話してきました。そして、どっちがいいのかについてはご自身のやろうとしている事業の規模や種類、今後のビジョンなどを総合的に判断する必要があります。
最後に、合同会社は、会社法上、課されている義務が少なく、自由な経営が出来るという強みがあります。しかし、どこまでも自由に決められるわけではありません。会社法上は問題ないが税制上は問題ないのかなどという専門的な知見がないと合同会社の運営は厳しいという意見もあります。
もし、法人なりを検討されている方がいらっしゃいましたら、一度専門家に相談されることをお勧めいたします。

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